1 |
有料道路 |
日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団、本州四国連絡橋公団、地方道路公社及び道路管理者(以下「有料道路事業者」という。)は、道路整備特別措置法(昭和31年法律第7号)に基づき、これらの者が建設・維持管理する道路の通行又は利用について、国土交通大臣の許可又は認可を受けて、料金を徴収することができるとされている。
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2 |
有料道路料金の障害者割引制度 |
昭和54年に「近年における有料道路の整備の進展に伴い、歩行機能が失われているため自動車を足代りとして運転する身体障害者が有料道路を日常的に利用する機会が増大している実情にかんがみ、有料道路の料金がこのような身体障害者の社会的経済的自立を阻むことのないよう当該料金について特別の割引措置を講じることが適当である」との理由から、身体障害者が自ら自動車を運転する場合の割引制度が設けられた。また、平成6年には、重度の身体障害者や重度の知的障害者の移動のために介護者が自動車を運転する場合にも割引するよう制度が拡充された。
これらの結果、現在、有料道路事業者は、自ら自動車を運転できる障害者だけではなく、移動につき介護者の助力を必要とする障害者についても、「移動すること等社会生活に関して相当のハンディキャップを負う障害者の自立と、社会経済活動への参加を支援するため、有料道路料金について、一般利用者との均衡を配慮しつつ割引措置を講ずる」ため、次のとおりの割引制度を設けている。
(1 |
)適用対象となる障害者の範囲 |
適用対象となる障害者の範囲は、次表のとおり、身体障害者手帳の交付を受けているすべての身体障害者及び療育手帳の交付を受けている重度の知的障害者とされている。
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適用対象となる障害者の範囲
区分 | 適用対象となる障害者 |
障害者が自ら自動車を運転する場合 |
身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)第15条第4項の規定により身体障害者手帳の交付を受けている者
(注)障害の程度1級から6級のすべてを含む。
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障害者の移動のために介護者が自動車を運転する場合 |
1) |
身体障害者手帳の交付を受けている者のうち、障害の区分ごとに定められた障害の程度に該当する者及び複数の障害を有するため障害の程度がこれに準ずる者
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2) |
療育手帳制度要綱(昭和48年9月27日付け厚生省発児第156号)に基づき療育手帳の交付を受けている知的障害者のうち、日常生活において常時介護を要する重度の者
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(2 |
)割引の対象となる自動車 |
割引の対象となる自動車は、次表に掲げる自動車(営業用の自動車を除く。以下「乗用車等」という。)であって、障害者又はこれと生計を一にする者が所有するもの(介護者が自動車を運転する場合であって、障害者等が乗用車等を所有していない場合にあっては、障害者を継続して日常的に介護している者が所有するもの)とされており、障害者1人につき1台に限って市町村において身体障害者手帳又は療育手帳に記載を受けることとされている。
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割引の対象となる乗用車等
自動車の区分 | 適用の対象 |
乗用自動車 |
普通自動車、小型自動車又は軽自動車であって乗車定員10人以下のものに限る。
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貨物自動車 |
乗用自動車と類似した構造及び機能を有すると認められるライトバン等に限る。
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特種用途自動車 |
乗用自動車と類似した構造及び機能を有すると認められる身体障害者輸送車に限る。
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(3 |
)障害者割引制度の利用手続 |
障害者割引制度の利用手続は、次のとおりであり、1)まず初めに市町村において、割引を受ける乗用車等1台の登録番号を身体障害者手帳又は療育手帳に記載してもらい、以降1回につき60枚綴りの割引証1冊の交付を受け、2)利用の都度、料金所において身体障害者手帳又は療育手帳を提示するとともに、氏名、身体障害者手帳又は療育手帳の番号を記入した割引証を1枚提出することとされている。
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割引制度の利用手続
市町村 (福祉事務所等) |
割引証交付申請(第1回目は車検証を提示)
(障害者有料道路通行料金割引証交付申請書)
↓
申請内容の確認(第1回目は、身体障害者手帳又は療育手帳へ自動車登録番号を記載)
↓
割引証の交付(障害者有料道路通行料金割引証綴(60枚綴))
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年間720枚を限度として、1回の申請につき1冊60枚の割引証を交付。通勤、通学、通院等の日常生活のため有料道路を通行する場合は180枚(3冊)まで交付枚数の増加可。
なお、料金所を2か所以上通過するルートの場合は必要枚数(2箇所の場合は2倍)を増加
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↓
〔割引証に氏名、身体障害者手帳又は療育手帳の番号を記入〕
↓
有料道路の料金所 |
身体障害者手帳又は療育手帳の提示
↓
障害者本人・自動車登録番号等の確認
↓
氏名、身体障害者手帳又は療育手帳の番号を記載した割引証1枚の提出
↓
料金の支払(5割引)
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4 |
違反行為に対する措置 |
有料道路事業者及び市町村は、障害者割引制度の利用につき違反行為があった場合には、次表のとおり、違反行為の内容に応じて通常料金や割増金の徴収、割引証の交付停止・返還請求の措置を講ずることとされている。
違反行為、これに対する措置の実施主体及び内容
違反行為 |
措置の実施主体及び内容 |
身体障害者手帳又は療育手帳の提示拒否、不所持 |
有料道路事業者は通常の料金を徴収 |
必要記載事項の記入がない割引証の使用 |
割引証・身体障害者手帳又は療育手帳に記載された事項と異なる利用 |
割引証を他人に譲渡 |
有料道路事業者の依頼を受けて市町村は割引証の交付を2年間停止 |
対象障害者以外の者が割引証を使用して通行 |
有料道路事業者は、通常料金のほか、不法に免れた額の2倍の額を割増金として徴収 |
対象障害者が虚偽の申請 |
(有料道路事業者の依頼を受けて)市町村は割引証の交付を2年間停止 |
対象障害者以外の者が虚偽の申請 |
(有料道路事業者の依頼を受けて)市町村は割引証の返還を請求 |
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5 |
障害者割引の利用実績等 |
(1 |
)障害者の人数 |
障害者の人数は、次表のとおり、身体障害者が約320万人(平成13年)、知的障害者が約57万人(平成12年度)となっている。
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障害者の人数
(単位:人)
身体障害者 | 知的障害者 |
級別 |
視覚障害 |
聴覚障害等 |
肢体不自由 |
内部障害 |
計 |
区分 |
人数 |
1級 |
105,000 |
1,000 |
243,000 |
501,000 |
850,000 |
重度 |
270,609 |
2級 |
74,000 |
88,000 |
445,000 |
6,000 |
614,000 |
3級 |
27,000 |
70,000 |
341,000 |
165,000 |
602,000 |
4級 |
28,000 |
64,000 |
397,000 |
170,000 |
660,000 |
中軽度 |
299,009 |
5級 |
34,000 |
5,000 |
221,000 |
− |
260,000 |
6級 |
32,000 |
101,000 |
83,000 |
− |
216,000 |
不明 |
1,000 |
17,000 |
19,000 |
7,000 |
45,000 |
計 |
301,000 |
346,000 |
1,749,000 |
849,000 |
3,245,000 |
計 |
569,618 |
(注) |
1 |
厚生労働省の資料による。 |
2 |
身体障害者の人数は、平成13年度身体障害者実態調査において18歳以上の在宅の身体障害者について調査した結果である。身体障害者の人数の内訳と計は、千人未満を端数処理しているので一致しない。
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3 |
知的障害者については、平成12年度末現在の療育手帳交付台帳登載数による。
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4 |
障害者のために介護者が自動車を運転する場合に障害者割引の対象となるのは、表中の緑の部分の級別又は区分に該当する障害者(身体障害者121万人、知的障害者27万人)の全部及び水色の部分にある級別に該当する身体障害者(105万4,000人)の一部である。
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(2 |
)割引証の送付実績の推移 |
割引証は、財団法人道路サービス機構が印刷し、市町村の要望に応じ必要枚数を送付することとされており、平成13年度には56万冊(3,336万枚)送付されている。
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割引証の送付実績の推移
(単位:箇所、万冊(万枚))
年度 |
平成7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
区分 |
市町村数 |
752 |
1,109 |
1,721 |
2,263 |
2,396 |
2,579 |
2,233 |
送付冊数 (枚数) |
10 (604) |
15 (890) |
26 (1,560) |
47 (2,803) |
59 (3,548) |
62 (3,696) |
56 (3,336) |
(注)財団法人道路サービス機構の資料による。
(3 |
)有料道路料金の障害者割引の実績の推移 |
有料道路料金の障害者割引の実績の推移は、次表のとおり、毎年度増加しており、平成12年度には約2,900万台、減収額124億円となっている。
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有料道路の障害者割引の推移
(単位:万台、億円、%)
年度 |
平成6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
区分 |
台数 |
846 |
1,369 |
1,668 |
2,271 |
2,284 |
2,670 |
2,901 |
割引額 |
34 |
58 |
70 |
95 |
95 |
115 |
124 |
減収率 |
0.146 |
0.228 |
0.260 |
0.342 |
0.343 |
0.408 |
0.437 |
(注) |
1 |
国土交通省の資料による。 |
2 |
減収率は、割引額(推計)を、仮に割引がなかったとしたら得られたであろう料金収入で除して算出した。
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