平成14年6月19日
総務省
有料道路料金の障害者割引制度における利用手続の緩和(概要)
−行政苦情救済推進会議の検討結果を踏まえたあっせん−


   総務省行政評価局は、次の行政相談を受け、行政苦情救済推進会議(座長:塩野宏)に諮り、その意見(別添要旨参照)を踏まえて、平成14年6月20日、国土交通省に対し、改善を図るようあっせんします。
   行政相談の申出要旨は、次のとおりです。
事案1)
   障害者は、有料道路料金について障害者割引を受けることができるが、利用できる自動車は、障害者が日常頻繁に利用する自動車1台だけとされている。しかし、介護を必要とする障害者は必ずしも決まった1台の自動車ではなく、地域のボランティアや近隣の知人等の自動車により通院等の手助けを受けることもあるが、これらの自動車は、障害者割引を受けることができない。ボランティア等が障害者の移動を手助けする場合にも障害者割引を受けられるようにしてほしい。
  <類似の事例>
   障害者である私は、息子夫婦がそれぞれ所有し運転する自動車によって移動の手助けを受けているが、1台の自動車しか割引の対象とならず困っているので、どちらの自動車でも障害者割引を受けられるようにしてほしい。
事案2)
   私は、身体障害者の母と旅行等のために障害者割引制度を利用して有料道路を通行している。しかし、障害者割引を受けるためには、事前に市の福祉事務所で60枚綴りの割引証の交付を受け、有料道路を利用する都度料金所で割引証1枚を提出しなければならず、障害者割引を受ける手続が煩さである。このため、料金所で身体障害者手帳を提示するだけで障害者割引を受けられるようにしてほしい。
   当省のあっせん内容は、以下の理由から、有料道路事業者に対し、有料道路料金の障害者割引制度について、その利用の実態を踏まえつつ利用手続の緩和について検討を行うよう要請することを国土交通省に検討を求めるもの。
1)    重度の障害者が複数の介護者からそれぞれが所有する乗用車等により移動の手助けを受けている場合において、利用できる乗用車等を1台に限定していることは実態にそぐわないものと考えられること。
2)    障害者が障害者割引制度を利用する場合の手続面の負担は可能な限り軽くすることが望ましいこと。





別添

行政苦情救済推進会議における意見要旨

   障害者対策としてバリアフリー化が重要な社会的課題となっている現状において、有料道路料金の障害者割引制度を重度障害者が利用できる自動車を1台に限定しておくなど制度の悪用防止を最優先課題として構築することは、社会の流れと少しずれているように考えられる。悪用防止策の必要があるとしても、それは必要最低限なものに止めておき、障害者の利便向上を図っていく必要があると考える。

   障害者割引制度について、料金所における適正な手続を踏んでもらう必要があるとしても、その際手間などの手続面の負担は可能な限り軽くすることが望ましいことから、例えば、料金所において確認した身体障害者手帳又は療育手帳の番号を(電算システムなどで)記録することにより、割引証の廃止を検討する余地があると考える。

<<行政苦情救済推進会議>>
   総務省に申し出られた行政相談事案の処理に民間有識者の意見を反映させるための総務大臣の懇談会(昭和62年12月発足)。会議の現在のメンバーは、次のとおり。

座長塩野   宏 東亜大学大学院教授
大森 政輔 元内閣法制局長官
大森   彌 千葉大学法経学部教授
加賀美幸子 千葉市女性センター館長
加藤  陸美 財団法人健康・体力づくり事業財団理事長
田村  新次 中日新聞社参与
堀田   力 さわやか福祉財団理事長、弁護士

資料

 有料道路
   日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団、本州四国連絡橋公団、地方道路公社及び道路管理者(以下「有料道路事業者」という。)は、道路整備特別措置法(昭和31年法律第7号)に基づき、これらの者が建設・維持管理する道路の通行又は利用について、国土交通大臣の許可又は認可を受けて、料金を徴収することができるとされている。

 有料道路料金の障害者割引制度
   昭和54年に「近年における有料道路の整備の進展に伴い、歩行機能が失われているため自動車を足代りとして運転する身体障害者が有料道路を日常的に利用する機会が増大している実情にかんがみ、有料道路の料金がこのような身体障害者の社会的経済的自立を阻むことのないよう当該料金について特別の割引措置を講じることが適当である」との理由から、身体障害者が自ら自動車を運転する場合の割引制度が設けられた。また、平成6年には、重度の身体障害者や重度の知的障害者の移動のために介護者が自動車を運転する場合にも割引するよう制度が拡充された。
   これらの結果、現在、有料道路事業者は、自ら自動車を運転できる障害者だけではなく、移動につき介護者の助力を必要とする障害者についても、「移動すること等社会生活に関して相当のハンディキャップを負う障害者の自立と、社会経済活動への参加を支援するため、有料道路料金について、一般利用者との均衡を配慮しつつ割引措置を講ずる」ため、次のとおりの割引制度を設けている。
(1 )適用対象となる障害者の範囲
   適用対象となる障害者の範囲は、次表のとおり、身体障害者手帳の交付を受けているすべての身体障害者及び療育手帳の交付を受けている重度の知的障害者とされている。

適用対象となる障害者の範囲
区分適用対象となる障害者
障害者が自ら自動車を運転する場合    身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)第15条第4項の規定により身体障害者手帳の交付を受けている者
(注)障害の程度1級から6級のすべてを含む。
障害者の移動のために介護者が自動車を運転する場合
1)    身体障害者手帳の交付を受けている者のうち、障害の区分ごとに定められた障害の程度に該当する者及び複数の障害を有するため障害の程度がこれに準ずる者
2)    療育手帳制度要綱(昭和48年9月27日付け厚生省発児第156号)に基づき療育手帳の交付を受けている知的障害者のうち、日常生活において常時介護を要する重度の者

(2 )割引の対象となる自動車
   割引の対象となる自動車は、次表に掲げる自動車(営業用の自動車を除く。以下「乗用車等」という。)であって、障害者又はこれと生計を一にする者が所有するもの(介護者が自動車を運転する場合であって、障害者等が乗用車等を所有していない場合にあっては、障害者を継続して日常的に介護している者が所有するもの)とされており、障害者1人につき1台に限って市町村において身体障害者手帳又は療育手帳に記載を受けることとされている。

割引の対象となる乗用車等
自動車の区分適用の対象
乗用自動車  普通自動車、小型自動車又は軽自動車であって乗車定員10人以下のものに限る。
貨物自動車  乗用自動車と類似した構造及び機能を有すると認められるライトバン等に限る。
特種用途自動車  乗用自動車と類似した構造及び機能を有すると認められる身体障害者輸送車に限る。

(3 )障害者割引制度の利用手続
   障害者割引制度の利用手続は、次のとおりであり、1)まず初めに市町村において、割引を受ける乗用車等1台の登録番号を身体障害者手帳又は療育手帳に記載してもらい、以降1回につき60枚綴りの割引証1冊の交付を受け、2)利用の都度、料金所において身体障害者手帳又は療育手帳を提示するとともに、氏名、身体障害者手帳又は療育手帳の番号を記入した割引証を1枚提出することとされている。

割引制度の利用手続
市町村
(福祉事務所等)
 割引証交付申請(第1回目は車検証を提示)
 (障害者有料道路通行料金割引証交付申請書)
   ↓

 申請内容の確認(第1回目は、身体障害者手帳又は療育手帳へ自動車登録番号を記載)
   ↓

 割引証の交付(障害者有料道路通行料金割引証綴(60枚綴))
   年間720枚を限度として、1回の申請につき1冊60枚の割引証を交付。通勤、通学、通院等の日常生活のため有料道路を通行する場合は180枚(3冊)まで交付枚数の増加可。
 なお、料金所を2か所以上通過するルートの場合は必要枚数(2箇所の場合は2倍)を増加

〔割引証に氏名、身体障害者手帳又は療育手帳の番号を記入〕

有料道路の料金所  身体障害者手帳又は療育手帳の提示
  ↓
 障害者本人・自動車登録番号等の確認
  ↓
 氏名、身体障害者手帳又は療育手帳の番号を記載した割引証1枚の提出
  ↓
 料金の支払(5割引

 違反行為に対する措置
   有料道路事業者及び市町村は、障害者割引制度の利用につき違反行為があった場合には、次表のとおり、違反行為の内容に応じて通常料金や割増金の徴収、割引証の交付停止・返還請求の措置を講ずることとされている。

違反行為、これに対する措置の実施主体及び内容
違反行為 措置の実施主体及び内容
身体障害者手帳又は療育手帳の提示拒否、不所持 有料道路事業者は通常の料金を徴収
必要記載事項の記入がない割引証の使用
割引証・身体障害者手帳又は療育手帳に記載された事項と異なる利用
割引証を他人に譲渡 有料道路事業者の依頼を受けて市町村は割引証の交付を2年間停止
対象障害者以外の者が割引証を使用して通行 有料道路事業者は、通常料金のほか、不法に免れた額の2倍の額を割増金として徴収
対象障害者が虚偽の申請 (有料道路事業者の依頼を受けて)市町村は割引証の交付を2年間停止
対象障害者以外の者が虚偽の申請 (有料道路事業者の依頼を受けて)市町村は割引証の返還を請求

 障害者割引の利用実績等
(1 )障害者の人数
   障害者の人数は、次表のとおり、身体障害者が約320万人(平成13年)、知的障害者が約57万人(平成12年度)となっている。

                        障害者の人数
(単位:人)
身体障害者知的障害者
級別 視覚障害 聴覚障害等 肢体不自由 内部障害 区分 人数
1級 105,000 1,000 243,000 501,000 850,000 重度 270,609
2級 74,000 88,000 445,000 6,000 614,000
3級 27,000 70,000 341,000 165,000 602,000
4級 28,000 64,000 397,000 170,000 660,000 中軽度 299,009
5級 34,000 5,000 221,000 260,000
6級 32,000 101,000 83,000 216,000
不明 1,000 17,000 19,000 7,000 45,000
301,000 346,000 1,749,000 849,000 3,245,000 569,618

(注)    厚生労働省の資料による。
   身体障害者の人数は、平成13年度身体障害者実態調査において18歳以上の在宅の身体障害者について調査した結果である。身体障害者の人数の内訳と計は、千人未満を端数処理しているので一致しない。
   知的障害者については、平成12年度末現在の療育手帳交付台帳登載数による。
   障害者のために介護者が自動車を運転する場合に障害者割引の対象となるのは、表中の緑の部分の級別又は区分に該当する障害者(身体障害者121万人、知的障害者27万人)の全部及び水色の部分にある級別に該当する身体障害者(105万4,000人)の一部である。

(2 )割引証の送付実績の推移
   割引証は、財団法人道路サービス機構が印刷し、市町村の要望に応じ必要枚数を送付することとされており、平成13年度には56万冊(3,336万枚)送付されている。

               割引証の送付実績の推移
(単位:箇所、万冊(万枚))
  年度 平成7 10 11 12 13
区分  
市町村数 752 1,109 1,721 2,263 2,396 2,579 2,233
送付冊数
(枚数)
10
(604)
15
(890)
26
(1,560)
47
(2,803)
59
(3,548)
62
(3,696)
56
(3,336)
(注)財団法人道路サービス機構の資料による。

(3 )有料道路料金の障害者割引の実績の推移
   有料道路料金の障害者割引の実績の推移は、次表のとおり、毎年度増加しており、平成12年度には約2,900万台、減収額124億円となっている。

               有料道路の障害者割引の推移
(単位:万台、億円、%)
  年度 平成6 10 11 12
区分  
台数 846 1,369 1,668 2,271 2,284 2,670 2,901
割引額 34 58 70 95 95 115 124
減収率 0.146 0.228 0.260 0.342 0.343 0.408 0.437

(注)  国土交通省の資料による。
 減収率は、割引額(推計)を、仮に割引がなかったとしたら得られたであろう料金収入で除して算出した。






有料道路料金の障害者割引制度における利用手続方法について

総務省 報道資料より転記
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